#手紙にしよう
2022.6.1
第2回#手紙にしよう対談
イラストレーターが訪ねる
切手と手紙の世界
「#手紙にしよう」を合言葉に、手紙の新しい可能性を探っていくプロジェクト「&Post」では、月ごとに発行される切手のパートナーとなるポストカードを制作しています。
第2回の切手は、2022年6月に発行される「グリーティング(ライフ・花)」。
切手を作った吉川亜有美さんと、ポストカードを描くイラストレーターの網中いづるさんが、作った切手への想いや、お互いの仕事のこと、ポストカードのイメージなどをオンラインで語り合い、ポストカードを完成させていく様子をレポートします。
ページの最後には、完成したポストカードもご紹介。ぜひダウンロードして、手紙を書いてみませんか。
〜PROFILE〜
日本郵便切手デザイナー。美大卒業後、化粧品のパッケージデザイナー、フリーランスデザイナーを経て、2017年日本郵便入社。代表作に、おいしいにっぽんシリーズ、年賀切手(2018年~)、ハッピーグリーティング(2018年、2020年、2021年)、ライフ・花(2018年、2022年)など。
イラストレーター。アパレル会社勤務を経て2002年に独立。書籍や雑誌、絵本、企業広告、パッケージなど、幅広い媒体で数多くのイラストレーションを手がける、主な装画の仕事に『完訳クラシック 赤毛のアン』シリーズ(講談社刊)、『三つ編み』(早川書房刊)など。1999年ペーター賞、2003年TISコンペ大賞、2007年講談社出版文化賞さしえ賞受賞。大分県立芸術文化短期大学デザイン科非常勤講師。TIS会員。
http://www.izuru.net
網中いづるさん(以下網中):私、そもそも切手デザイナーという職業があることを知らなくて、切手は誰が作っているんだろうって思っていたんです。日本郵便の社内の方が作っていたんですね。
吉川亜有美さん(以下吉川):日本郵便の中に切手・葉書室という部署があって、そこに在籍している8人の切手デザイナーがデザインしています。
網中:すごいですね、日本中の人が買って使うものを8人で作るって、予想外に少ないです。年にどれくらいデザインを担当するんですか?
吉川:年間に発行する切手がだいたい40件ちょっとあって、それを8人に振り分けるので、多い人で6、7件担当しています。
網中:切手デザイナーとして入社したら、ずっと切手のデザインができるんですか?
吉川:基本的にはずっとですね。
網中:とってもうらやましいです(笑)。大変そうだけど、やりがいがあって楽しそうです。
吉川:そうですね(笑)。中途採用で入ってもう5年くらい経つんですが、切手って題材になるものがたくさんあるから、アウトプットの形が切手だけでも飽きずに楽しくやっていけているなーと思います。〇〇記念切手とか、国交樹立〇◯周年切手とか、自分から歩み寄っていかないようなテーマもあるので、作っていて楽しいですね。
網中:コラボレーションも多いですよね。漫画やアニメーション、絵本の切手なんかも定期的に出ているでしょう? 私もですが、まわりの友人らも切手好きが多いので、発売の予定はチェックしますし、SNS上で「竹久夢二の『ライフ・花』でたよー」など、写真を上げてよく自慢し合っています。「絵本の世界シリーズ」は、第一集の「きんぎょがにげた」からずっと欠かさず買っています。日本郵便のホームページに過去の切手から今販売されているものまで出ているので、ゆっくり見ているとすごく楽しいですよね。
吉川:ありがとうございます。キャラクターの切手は、年間で何枠か発行予定があるんですよ。
網中:私は個展のお知らせをするためにDMをよく出すんですけど、料金別納郵便でもいいのに、切手を貼って出していて。大好きな切手は大切なあの人に、かわいい切手はかわいいこの人にって、ギフトのように選んでいます。速達で送る時にも、あえて切手を5、6枚貼って送って、切手好きなら「あっ、この組み合わせできたか!」って、思ってくれるのでは、と考えて楽しんでいますよ。
吉川:わかります、私も定形外郵便やゆうパックは切手で送るので。SNSを見ていると、シートごとぺたっと貼って送っている人もいますよね。
網中:そうそう、側面にも貼ってある写真を見ました! 海外旅行の時もその国の切手を買ったりします。デザインが美しいから、自分用にコレクションしたり、お友達へのお土産にしたり。日本でもそういった需要はあるんでしょうね、海外の方には和の切手が喜ばれそう。「江戸-東京シリーズ」は吉川さんがデザインされているんでしたっけ?
吉川:そうです。「江戸-東京シリーズ」のほかに、去年は「ハッピーグリーティング」という贈り物をイメージした切手や、ご当地グルメをテーマにした「おいしいにっぽんシリーズ」も担当しています。
吉川:「おいしいにっぽんシリーズ」は、現地のお店や料理家さんのところに取材に行って、実際においしいものを撮影して食べてから絵にしているので、とても楽しいです。この時は名古屋に行きました。
網中:84円シートのほう、丸い形の中にお料理が入っていて、すごくかわいいです!
吉川:ありがとうございます。お皿のイメージで丸にしました。
網中:63円シートにある駄菓子もたまらないですね。俯瞰の構図がインスタグラムっぽくて。
吉川:取材は、雑誌『BRUTUS』(マガジンハウス刊)のライターさんに同行してもらっているので、「『BRUTUS』の料理写真といえば俯瞰でしょ」と思って構図を考えました。
網中:リアルでありつつ絵的でもある切手で、いいですねぇ。何でも描けちゃうデザイナーさんですね。
吉川:いやいや……お花なんかは本当に描けないんですよ、実は。
網中:いや、描いてます描いてます(笑)。今回の「グリーティング(ライフ・花)」だってそうじゃないですか。
吉川:イラストは描けるんですけど、リアルなお花の絵を描くのは昔から苦手で。今回描いているお花も、わりと抽象的なお花なんです。「ライフ・花」は毎年発行されているんですけど、今回は季節感をあまり出さずに、この1枚を持っていれば1年中使えたり、いろんなコーディネートを楽しめたりする切手になればいいなと思ってデザインしました。
網中:季節が限定されないのはいいですね。季節のお花の切手も好きで買うんですけど、このお花はこの時期に貼るのは合わないかなと思って、使えないことがあるから。
吉川:花屋さんに年中置いてあるお花を思い浮かべながら、ちょっとデフォルメして描きました。思いの向くままに何種類か描いてから、バランスよく振り分けて切手に仕立てています。
吉川:網中さんは、画材は何を使って描かれているんですか?
網中:アクリル絵の具で描くことが多いけど、仕事によって変わりますね。例えば、背景も広く塗るようなディスプレイや装画など大きなものはアナログで、サイズの小さいものはデジタルなど、使い分けています。
吉川:私もデジタルで描くこともあります。今回の「ライフ・花」もAdobe Frescoで。
以前はアナログで描いてからスキャンして、Adobe Photoshopで加工していたんですけど、Frescoを使い始めたら、レイヤーが分けられるので便利だったんですよね。
網中:そうですよね。私も、前に日本茶専門店「一保堂茶舗」のアニメーションや、NHK Eテレで放映された紙芝居歌舞伎を作った時にも、レイヤーが扱いやすくてFrescoを使いました。あとは、お仕事の依頼をいただいた時に先方が絵のイメージを持っていることが多いから、相談しながら決めますね。併用することもあったり、絵の具以外にも墨汁でスミ一色のドローイングにしたり、道具の選択はその時々なんです。
吉川:すごいですね〜。私、イラストレーターさんという職業に憧れがあります。自分の絵が描けるって、すごいことだと思って。私も切手のデザインをする時に絵は描きますけど、表現者ではないんですよ。あくまで求められるものに応えるのが仕事なので、絵としての自分の持ち味がそんなにないというか、バラバラだと思っていて。
網中:統一感、ありますよ。どれも優しいかんじで。色の選び方にも共通点がある気がします。それに、私もオリジナルを描くことはあるけど、基本は仕事の要望に応えて描きます。たくさんの方が関わるチームの仕事という意識です。描いたらデザイナーに次を託してできあがりを楽しみに待つ、みたいな。イラストレーションの仕事はそこがおもしろいですよ。この絵はどんなふうになるんだろう? って。使ってくれる人のことをすごく考えながら作るところは切手のデザインと同じだと思います。
吉川:「ライフ・花」は生活の中にあるお花というイメージがあるので、コロナ禍の生活スタイルを反映して、お部屋の中をテーマにしたポストカードを描いていただくのはどうかなと思っていました。お出かけがしづらいご時世だから、逆に外がテーマということでもいいんですけど(笑)。私は小物やインテリアが好きなので、そういうポストカードがあったらいいな。でも、網中さんが描く動物もかわいいし、迷いますね。
網中:お花と相性のいいものがよさそうですよね。切手がデジタルなかんじだから、ふんわりした雰囲気よりも、シャープなほうがいいのかな。
吉川:雰囲気を合わせなくても、切手のお花に似たお花があるとか、そのくらいの共通点があればいいのかなとは思います。
網中:花畑の中にユニコーンや少女など、今までよく描いています。この切手のお花がたくさん咲いているところに、動物をいくつか考えるのもいいかもしれませんね。みんなが好きなのは、やっぱりかわいい生き物ですよね。
吉川:うんうん、小動物なんかもかわいいですよね。切手のシートの中に鳥がいるので、鳥が出てきてもいいかも。
網中:鳥、いいですね。明るくて。あとは、この切手のお花はテキスタイルっぽさもあるので、部屋の中だったらカーテンや壁紙を花柄にするのもありですかね。
吉川:それもいいですね。
網中:でも、やっぱり鳥もいいな。迷っちゃいますねぇ。ちょっと検討します(笑)。
完成したポストカードはこちら!
第2回ポストカード
「お花の部屋」
※ポストカードのダウンロードはこちらから!
https://andpost.jp/project/tegami.html
第2回切手
「グリーティング(ライフ・花)」
2022年6月8日発行
全国の郵便局の郵便窓口、
または「郵便局のネットショップ」にて、6月8日から発売開始!
https://www.post.japanpost.jp/kitte/collection/archive/2022/0608_01/
協力:東京イラストレーターズ・ソサエティ、日本郵便
構成・文:平岩茉侑佳